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カワイオカムラ/COLUMBOS
福永 信

2014.06.19
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アルスエレクトロニカ2014が発表された。カワイオカムラの短編アニメーション作品『COLUMBOS』は惜しくも受賞には至らなかったが、この極めてミステリアスな作品が、「コンピュータアニメーション/フィルム/VFX部門」に選出されたことは、ひとまずはそれだけでも、非常にすばらしいことであると思う。また、この作品は、昨年、ポーランドのクラクフ映画祭で、短編部門最優秀アニメーション作品賞を受賞している。すでに世界的な栄誉に輝いているともいえる。さらに、一昨年にはロカルノ国際映画祭をはじめ、各地の映画祭に招待されてもいる。このわずか9分あまりの作品『COLUMBOS』は、すでに10か国以上の国々を行脚して多くのお土産を持って、今、帰国の途に向かっていると見なしうる。

 
『COLUMBOS』(コロンボス)とは何か? 精巧な美術と、役者(人形)の演技力、緊張感のある雰囲気にひかれながら、つい見入ってしまうが、実際のところ何が起こったのか、見終わってもサッパリわからない。舞台は、「殺人事件の現場」であり、観客の誰もが物語の展開、起伏を期待している。しかし物語は、息をひそめたままだ。じっとして動かない。「息をひそめる」というより、おとり捜査のように登場人物達が、よってたかって、「物語」がやってくるのを待ち伏せしているように思える。何かが始まりそうな気配だけが、舞台上の複数の場所を、行き来する。登場人物達は、物語の息の根を止めようとしているのかもしれない。物語の罠にはまるのがミステリーの王道だとすれば、物語を罠にはめるのが、カワイオカムラの作品である。作品の全編は、アルスエレクトロニカ2014のサイトで実際に見ることができるので確かめてほしい(こちらのサイトでは予告編を見ることができる)。

 
では、そのカワイオカムラとは誰か? 川合匠と岡村寛生の二人組のユニットであり、共に京都造形芸術大学の教員である。40代半ばだ。作品数もわずかで寡作といえるが、作者本人のメディアへの露出も非常にすくない。消費されることに警戒感を持っているからだろう。その正体についてはわたしの知っているかぎりを次のブログに書くことにするが、おどろくべきなのは、これほど世界から注目されている『COLUMBOS』の公式上映が、日本では、まだないということだ。ぼくもDVDでしか見たことがない。日本にキュレーターなる職業の人がほんとにいるならば、ぜひなんとかしてください。

 

(画像提供:カワイオカムラ)