インフラとその他の話
ヒーマン・チョン(アーティスト、シンガポール)
現代アートを取り巻く環境は、この数⼗年で⾶躍的に複雑化し、そのなかでアーティストとしてグローバルに活躍する道を模索するのは容易ではありません。世界各地で同時多発的に⽣産される芸術の概況を把握することは、もはや不可能といって良いでしょう。とりわけ、経済成⻑と近代化の進む近隣アジア諸国では、新しい美術館の創設やアートフェア、国際展の隆盛などによって発表の機会も拡⼤し、世界からこの地域に向けられる注⽬も⾼まっています。⼀⽅、すでにアートを取り巻くインスティテューションの整備を終えた感もある⽇本では、むしろ制度化の再考、アーティストの社会的役割、グローバルなネットワーク構築などが改めて問われているという状況です。
京都では、多くの芸術系⼤学から毎年新しいアーティストが輩出されていますが、⽇本の伝統⽂化の中⼼地でもある街から、このように複雑化した現代アートの世界と、今⽇、どのようなつながりを⾒出すことができるのでしょうか? この問いを起点に、京都造形芸術⼤学(現 京都芸術⼤学)では、2016年度にHAPS(東⼭アーティスツ・プレイスメント・サービス)との共催で「ULTRA X HAPS TALK」シリーズを開始。世界各地で活躍するアーティスト、キュレーター、研究者、コレクターなどの視点を通して、多様化する現代アートや現代社会の様相に触れてきました。2018年度には⼤学院に、グローバルに活躍するアーティストやキュレーターを⽬指すコースとしてグローバル・ゼミが創設され、以降同シリーズは「グローバル・アート・トーク(GAT)」と改称し、同ゼミにおける、年間6名のゲスト講師による公開レクチャーという位置づけで継続されてきました。そのなかでは、それぞれの地域固有の政治的、社会的な⽂脈のなかで世界との関係性を問うこと、冷戦時代やポスト冷戦時代のレガシーや伝統的な⽂化といった歴史を再読すること、作品保存やアーカイブ化に関わる実践と課題、気候変動問題や産業構造の変化を意識すること、⾃然科学的および宗教的視点から模索する壮⼤な⾃然界とのつながりなど、実にさまざまな⽴ち位置から「世界」を学んできました。
「ICA京都」では、GATを主要プログラムのひとつとして継承し、京都芸術⼤学⼤学院グローバル・ゼミと連動しながら講師陣を招聘していきます。次世代を担うアーティストやキュレーターをはじめ、現代アートに関わるみなさんが、それぞれの講師の視点から⾒えてくる「世界の断⽚」をつなぎあわせ、⾃ら世界へ歩み出すための地図を描く⼀助となるよう、引き続き刺激的な企画をお届けします。
ヒーマン・チョン(アーティスト、シンガポール)
吉竹美香(インディペンデント・キュレーター、米国)
リー・キット(アーティスト、香港)
チャールズ・リンゼイ(アーティスト、サンフランシスコ・米国)
グレッグ・ドボルザーク(早稲田大学教授、インディペンデントキュレーター、米国/日本)
金澤韻(キュレーター、日本)
ライアン・タベット(アーティスト、レバノン)
米谷健+ジュリア(現代美術家、日本/オーストラリア)
服部浩之(キュレーター/秋田公立美術大学大学院准教授/京都芸術大学客員教授、日本)
山本浩貴(文化研究者/アーティスト、日本)
ジュン・ヤン(アーティスト、中国/オーストリア/台湾/日本)
島袋道浩(アーティスト、日本)
田中功起(アーティスト、日本)
リー・ミンウェイ(アーティスト、台湾/フランス/米国)
アーニャ・ガラチオ(アーティスト、英国/米国)
神谷幸江(ジャパン・ソサエティー、ニューヨーク、ギャラリー・ディレクター、日本/米国)
デビッド・テ(インディペンデント・キュレーター/シンガポール国立大学准教授、シンガポール)
スーザン・ノリー(アーティスト、オーストラリア)
マイケル・ジュー(アーティスト、米国)
手塚美和子(キュレーター、日本/米国)
ヒーマン・チョン(アーティスト、シンガポール)
シュレヤス・カルレ(ヴィジュアル・プラクティショナー/CONA財団・KATCONA Design Cell共同ディレクター、ムンバイ、インド)
島袋道浩(アーティスト、日本)
サスキア・ボス(美術史家/インディペンデント・キュレーター/批評家、オランダ)
ルディ・ツェン(インディペンデント・キュレーター/アート・コレクター、台湾)
大森俊克(美術批評/現代美術史、日本)
片岡真実(京都造形芸術大学大学院芸術研究科 教授/森美術館チーフ・キュレーター[当時。現在、京都芸術大学大学院客員教授/森美術館館長] 、日本)
島袋道浩(アーティスト、日本)
ウンジー・ジュー(第5回安養パブリック・アート・プロジェクト (APAP5)[韓国京畿道安養市]芸術監督 [当時。現在、サンフランシスコ近代美術館現代アート・キュレーター]、米国)
デイン・ミッチェル(アーティスト、ニュージーランド)
グリナラ・カスマリエワ&ムラトベック・ジュマリエフ(アーティスト、キルギス共和国)
クリッティヤー・カーウィーウォン(ジム・トンプソン・アートセンター芸術監督、バンコク、タイ)